南東欧の地域は、国ごとに民族構成、言語、宗教が異なっています。かつて、ユーゴスラビアは「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」といわれるほど多種多様な国家でした。
(1)民族
民族的には、旧ユーゴスラビア諸国のほとんどとブルガリアが南スラブ人(ボシュニャク人、セルビア人、モンテネグロ人、クロアチア人、スロベニア人、マケドニア人、ブルガリア人)が中心であるとされ、 そのほか、アルバニアとコソボがインド・ヨーロッパ語族系のアルバニア人、ルーマニアとモルドバがロマンス語系のルーマニア人となっています。
ギリシャはこの地域を出自とするギリシャ人、トルコの東トラキア地方はギリシャ人のほかブルガリア人の住んでいる地域です。
(2)言語
言語は旧ユーゴスラビア諸国のほとんどとブルガリアが南スラブ語群で、そのほか、アルバニアとコソボ(及びマケドニア、モンテネグロの一部)がアルバニア語、ルーマニアがラテン語系のルーマニア語となっていますが、 これらの言語には共通性があるためバルカン言語連合と総称されています。
文字はラテン文字(ローマ文字)とキリル文字(ロシア文字)が存在し、スロベニア語・クロアチア語、ルーマニア語・アルバニア語は前者、ブルガリア語・マケドニア語・セルビア語は後者です。 セルビア語とクロアチア語は文字が異なりますが、同一の言語と見なされるため、セルビア・クロアチア語とも言われます。 ボスニア語はセルビア・クロアチア語の一種でラテン文字が主であるが、キリル文字表記も可能です。
ギリシャはラテン文字、キリル文字とも異なるギリシャ文字を使用しています。 ギリシャ文字はラテン文字とキリル文字の元になった文字で、アルファベットという言葉はギリシャ文字のα(アルファ)とβ(ベータ)に由来しています。 また、ギリシャ語はインド・ヨーロッパ語族の中で最も古いものであるとされ、ラテン語やその系列であるロマンス諸語(フランス語やイタリア語など)などに大きな影響を与えてきました。
(3)宗教
宗教は、正教、カトリック、イスラム教の3つに大別され、基本的に北西部(スロベニア)はカトリック、中部・東部(セルビア、ルーマニア、ブルガリア、モンテネグロ等)は正教、 南部(アルバニア、コソボ)はイスラム教が中心ですが、ボスニア・ヘルツェゴビナのボシュニャク人のように南スラブ系でありながらイスラム教に帰依した民族もあります。 ギリシャは東西教会の分裂した東側の正教会(ギリシャ正教、東方教会)です。
以上のように、国と民族、言語、宗教が渾然としており、東西南北からの民族の進出、周辺との紛争、支配・被支配の長い歴史が現在の南東欧の状態を形成しています。